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プロペシア服用者の男性は性機能減退の恐れもある

精力の減退の副作用は2%以下

 プロペシアは医師の処方斐がなければ入手できないが、認可に当たってFDAは、「服用者の男性は性機能減退の恐れもある」とつけ加えることも忘れなかった。

 それについては発売元のメルク社も報告していて、プロペシアを使ったために性機能、ひらたくいえば精力の減退を訴えた人の数は、プラセボ群と比較して2%以下とのことだった。しかし、いくらこの薬が、抗男性ホルモンのようにテストステロンの受容体に働くのではなく、その次の段階である、テストステロンをDHTに変換する5アルファ還元酵素の阻害薬だとはいえ、テストステロンに「もういらないよ」とささやきかけることが、絶対にないとはいいきれない。

 つまり、抗男性ホルモンほどではないにしても、間接的には、男性ホルモンの製造工場の精巣や、製造を命ずる脳の視床下部に対してブレーキをかける、「負のフィードバック機構」が働くであろうことは十分に考えられるのである。

 また、使用をやめれば毛髪は元に戻ってしまうため、いったん使い始めた患者たちは、おそらくは一生、とまではいわなくとも、少なくとも社会生活のつづくかぎり、使いつづけるに違いない。医薬の認可にきびしいことで知られるFDAが認めるほど、見事にデザインされ、臨床試験でも十分に科学的検証が行われたとはいえ、その期間はせいぜい2年間である。

 多くの場合、患者たちは、それよりはるかに長期間にわたって服用することになるわけだから、今後、精力減退を訴える人は、さらに増えてくるかもしれない。そうなると、これはよくあるような、薬が発売されてから発見される「思いがけない副作用」などではなく、「予見される副作用」といってよい。

 だからといって製薬会社に、もっと長い時間をかけて検証せよといっても無理である。「ハゲはいやだ」という人々の熱望は、そこまで待てないからだ。つまり、これは一つの社会的判断ということになる。

 患者側にとっては、精力維持をとるか、毛生えをとるかだが、どちらも生命に影響はないとはいえ、ともかく二者択一を迫られることになる。ハゲなど気にしない、性機能のほうが大事だという人もあるだろうし、性機能など犠牲にしても毛が生えたほうがよいと考える人もあるに違いない。つまりは、個人の価値判断の問題ということになる。

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